
酒とブドウの神ディオニューソス(バッカス)が、酒を作り入れておくための鉢として使っていたものだとされています。ギリシャ人達は「ディオニューソスの鉢」とも呼んでいました。ディオニューソスがギリシャのアテネに滞在したときに、王イカリオスのもてなしに感謝し、この鉢と酒の作り方を与えました。王はさっそく酒を造り農民にふるまいました。ところが、毒を飲まされたと勘違いした農民たちは、王を打ち殺してしまったのです。王の死を悲しんだ忠犬メーラ(小犬座)は、王の墓の前で餓死したと伝えられています。また、一方恐ろしい魔女メーデアの神話があります。これは、魔女メーデアの鉢だと言うのです。メーデアは黒海の岸にあったコルキスの王女で、恐ろしい魔法使いとして知られていました。イオルコスの王子イアソン率いるアルゴ船探検隊が黄金の羊毛を求めてコルキスに来たとき、イアソンに激しく恋をしてしまいました。メーデアは勇士イアソンを助け、宝物を守っていた火竜を眠らせて、首尾良く宝物を手に入れさせました。メーデアは父王アイエテスに逆らい、イアソンを助けたため、彼とともにイオルコスへと逃れてきました。その頃、イオルコスの国はイアソンの叔父ぺリアスによって支配されていました。イアソンはぺリアスに「約束どおり黄金の羊毛を持ってきたので、王位を返して下さい。」と言いましたが、王位を譲る気などまるでなかったぺリアスは、イアソンの申し出の、約束など知らないと突っぱねました。そこでメーデアは策略をめぐらし、イアソンの父が、もう老年ですっかり弱っていました。するとメーデアは、父を若返らせてあげるといって、どこか遠い国へ飛んでいき、薬草を集めて戻ってきました。それを海辺の砂や、月の夜に取った霜や、フクロウの首のはねや、大神の腸や、鳥のくちばしなどと、この鉢に入れて、ごとごとと煮立てました。そしてイアソンの父を眠らせて、のどを切り裂いて、その汁を流し込むと、不思議なことにみるみる髪の毛が真っ黒な、若者になって起きあがりました。これを見ていた、イアソンの叔父ぺリアスが「私も若返りたい」と言いました。メーデアは、その娘達をだまして、父を斬り殺させ、大きな鉢の中に入れてゆでてしまいました。このほかにも恐ろしい魔法を使ったので、さすがのイアソンも恐ろしくなり、メーデアを追い出したと言うことです。(イアソンに別の女ができたと云う話もあります。)そしてメーデアが薬草の汁を混ぜた鉢が、この星座になったと伝えられています。
キリシャ神話より
